映画祭大にぎわい。洋画公開劇場に閑古鳥。ナニソレ?

かなりキツい言い回しで長々と嘆きます。

映画祭大盛況!

ボクは9月のシルバーウィークに「したまちコメディ映画祭(したコメ)」でほぼ連日浅草通いをしてました。前夜祭の映画秘宝ナイトで「キックアス」。オープニングは現在公開中の韓国スポーツ物の「国家代表!?」。あとは特別招待作品の「やくざガール」「チャホ」「3バカに乾杯!」「水も滴るお姫様」。井上ひさし追悼企画上映で愛川欽也タモリ主演で78年の作品「喜劇役者たち 九八とゲーブル」などなど鑑賞。
したコメは去年から行きだして、映画秘宝オールナイトでの「ハングオーバー」「テコンV」「すかんぴんウォーク」。特別招待作で韓国の満州ウェスタンパロディ映画の「タチマワ・リー 〜悪人よ地獄行き急行列車に乗れ」と、やはり韓国の低予算コメディ「昼間から呑む」を見ました。
去年と今年の大きな違いはとにかく客の入りが増えた事。「映画秘宝」イベントは東京ファンタの頃から人気イベントでしたし『公開されない大傑作!』という煽りもあって満員札止めでした。その反面、特別招待作の上映はザッと見積もらなくてもせいぜい30〜40人程度の入り。
対して今年はというと、今回も札止めの秘宝ナイトはともかく、招待作の方もおしなべて劇場は7〜8割は埋まっており、特に「3バカに乾杯!」は3時間超えのインド映画でしたが、ほぼ満席でした。

したコメとほぼ同時期に開催したかなざわ映画祭には先立つ物不足のためにこの数年伺っていませんが、こちらも年を追うごとに動員を伸ばしているんではないでしょうか?盛況だというウワサを聞きます。今年はマボロシの恐怖映画「シェラデコブレの幽霊」野外上映のニュースが報じられていました。

この週末に終了する東京国際映画祭tiff)ですが、もちろんスコリモフスキやポランスキーの新作も見たかったのですがサラリーマンのボクにとって平日の昼のみの上映はさすがに抜け出せず。そんな中で“アジアの風”と題された特集企画で、土曜に上映のあった作品から、ブルース・リャンとチェン・カンタイという往年のスターが共演する香港版エクスペンダブルズ「ギャランツ〜シニアドラゴン龍虎激闘」と、ブルース・リーの師匠としても名高いイップマンをドニー・イェンが演じた「葉問 序章」のチケットが取れ、劇場についたらその続編の「葉問」(原題は「葉問2」)の当日券をゲット、めでたく丸1日カンフー映画見っぱなしとなりました。で、翌日はtiff関連企画でやはりドニー・イェンが出演する「ボディーガード・アンド・アサシンズ」を友人からチケットを回してもらい鑑賞しました。国際映画祭でも何でも無いですね。ボクにとってはドラゴン映画祭でした。

tiffはとにかくチケットが取れませんでした。まず、ぴあのプレリザーブに申し込むも落選。発売日にコンビニの発券機に30分前からかじりついて「葉問 序章」のチケットを10時になった瞬間に確保。すぐ後に「葉問」を取ろうとしたらすでに完売。その間わずか1〜2分である。正に瞬殺!
後に関係者用でキャンセルの出た席を放出するというので、また発券機にかじりついて「ギャランツ」のチケットを確保するも、「葉問」はやはり取れず。あきらめていた所で当日券枠で取れたのでラッキーではあった。当然劇場内は満席。幸福な熱気と共にドラゴン満喫できました。

映画館に閑古鳥

一方、新作を上映する“真っ当な”映画館ではかなり寒々しい状況に立ち会う事が多い。
立川で見た「ガフールの伝説」「シングルマン」は中〜大規模のスクリーンに客が1割程度でしたし、吉祥寺で初日にかけつけた「エクスペンダブルズ」でさえ約5割程度。新宿歌舞伎町で公開週の日曜日に見た「TUNAMI」はミラノの大ハコで約3〜4割程度。「超強台風」は4〜5割ほどでしたが、いかんせん一番小さいミラノ3ですから多くて100人程度でしょう。もちろん、映画祭と違って上映期間が長いですし、おしなべられての動員になるでしょうから単純な比較にはなりませんが。
では“真っ当では無い”映画館はどうか?
週末だけしか目撃した事が無いですが、ワリと盛況です。「十三人の刺客」を見るため公開の翌週末に新宿ピカデリーに行きましたが、朝一番に劇場についても午前の回は当然、午後最初の回も完売。夕方の回をようやく押さえるという状況でした。
その時に驚愕したのは10(!)もあるスクリーンで、洋画は「バイオハザード4」と「食べて、祈って、恋をして」のたった2本のみ。それ以外はまだまだやってた「踊る3」やら何やらと。そりゃ、面白い映画見るために映画祭に駆け込むわ!

それらと関係のある話。

話題になっている新書「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」についてのエントリー(http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20101026#p1)を教えてもらって読んだのですがナルホドと現在の日本の映画をとりまく状況が腑に落ちました。
エントリー内でid:fujiponさんは荒井晴彦の苦言に対してこう言います。

「わからなくはないけれど、ずっとそればっかりやってきたから、みんなもう暴力とセックスには飽きてしまっているんじゃないか?」とも思うんですよ。

『暴力』と『セックス』に飽きた?
バカを言ってはいけない。fujiponさん個人の感情は知るよしもありませんが、世の中は常に暴力とセックスを求め続けています。「踊る大捜査線」最初の劇場作が公開された1998年の最大ヒット作はかの有名な「タイタニック」だ。確かに物語はプリオとケイト・ウィンスレット恋物語を軸にしているが、公開前の予告で繰り返し見せられたのは巨大な客船が海面に突き立ちフェンスにしがみついていた男が力つきて落下し、船の客室にブチあたりピンボールの玉のようにはじかれ海に落ちる残酷なシーンだ。また、興行収入でこの年の7位につけているのは大残酷絵巻「プライベートライアン」だ。
翌年1999年。1位は地球の主要都市にボッカンボッカンと隕石が落ちる「アルマゲドン」。3位はカンフーSF「マトリックス」。邦画だと6位に幽霊のやつあたりで人が死ぬ「リング2」。そして10位には巨匠キューブリックの遺作にして大パノラマポルノが展開される「アイズ・ワイド・シャット」だ。
もちろんこの期間に公開されてセックスにも暴力にもあまり偏らないヒット作はあります。しかし、そもそも「踊る大捜査線」自体、当時の世相問題をあまりに稚拙ではあるが、それらを反映した映画なので、世の中に溢れる、ある種の“暴力”を描いていると言えるでしょう。
遊び半分に誘拐事件を起こす若者。河をはさんで『こっちに来てくれるな!』とドザエモンの流れ先を願う警官たち。息苦しい警察組織構造。具体的な事例こそ違えど、一応社会で起こっている事象に似ているのではないだろうか?そういった社会から逃避するために劇場で世の中のせちがらさを別のアングルで確認するのはありえるだろうか?
おそらく逃避は関係ないんである。では、何故『踊る大捜査線』はヒットしたのか。これは本当に簡単な話なのだ。

ククレカレーvsトップバリュ

例えば。スーパーでレトルトカレーを買おうと棚の前に立つと、それはそれは様々なカレーが並んでいるワケだ。辛口、中辛、甘口にはじまりチキンにビーフ、ポーク、海鮮にキーマカレー、果てはスープカレー。とにかく種類は多い。その中でよくCMをしてタレントが旨そうにモシャモシャと喰っていたカレーと、ノンブランドでそっけないパッケージのカレー、それぞれ値段が同じであるとしたらドッチを選ぶか?
天の邪鬼は「CMしているようなカレーはいつでも喰えるからノンブランドだね!」とでも答えるだろうが、マジョリティはおおむね保守的な意見に偏るものだ。つまり、CMをしているという“保証”がある有名な方を選ぶ。
踊る大捜査線』はfujiponさんが引用した亀山プロデューサーの言葉にもあるように、ヒットに導くべく『公開まで約1年かけて温めていった』からヒットしたのだ。
多くの人の目にふれた『踊る大捜査線THE MOVIE』1作目は、(暴力とセックスも、気軽に見れるシネコン感覚も全く関係無く)それなりに面白い出来であった事が、口コミの相乗効果を産み『大』をつけても良いヒットをしたと記憶している。しかし、その後の『踊る大捜査線』シリーズは思いつくかぎり最低最悪な経路を辿る事になる。

これが詐欺の現場だ!

『大ヒット』という“保証”を得たシリーズはあまりに雑でいいかげんな2作目を産んだ。これが前作の恩恵を受けて大ヒット。いかりや長介の死去と(芸能誌の憶測によれば)織田裕二の傲慢で、主役不在のまま「パトレイバー」のスーパー劣化コピーである「交渉人 真下正義」。学園祭レベルの脚本とオープンセットが見れる「容疑者 室井慎次」というスピンオフまで産みだした。そして5年後の今年に3作目の公開となり、それなりな“ヒット”をしている。
なぜダブルコーテーション付きの“ヒット”なのかというと、過去の2作の中で一番売れていないのだ。もちろん5年という、シリーズ物のスパンとしては熱の冷えるには充分な期間があった事も作用しているだろう。しかし、それにしてもフジテレビ看板シリーズが“ヒット”程度なのは何故だろうか?
というと、いいかげんでクソ下らないゲロのような映画をいくら過去の栄光というラッピングで隠してもゲロだと解れば喰わない人も出て来るという事だ。
と、考えると前2作よりも少ないにしろゲロを喰う人がダブルコーテーション付きとはいえ“ヒット”するほどいるのは何故だ?という問題に直面する。そして、「それはゲロでは無いという証拠だ!」と言う人もいるだろう。
残念ながら、おそらくゲロだ。少なくとも大ヒットに相応の映画では無いという事は、見ていないボクでも断言できる。漏れ伝え聞くあらすじを読むに、どうやら「踊る3」は次の作品からパクっているようだ。「ダーティーハリー」「ダイハード」「同3」「ダークナイト」の4本。ボクはパクり元の4本は全て見ているのだが、ではこの4本と「踊る3」を比べてどちらが面白いか?と両方を見た人に問いたい。
映画というのは世の中にたくさんあって、かならず相対的な評価にならざるをえない。となれば最低でもパクり元の4本よりも低いのは容易に想像つく。さらに世の常として、そういった志の低い、あらすじを聞いただけでパクり元が割れるような適当な脚本で、しかもバジェットは(邦画にしたら多いのだろうが、世界をマーケットとしているパクり元に比べ)低いし、俳優の演技も画面作りも元ネタとは比べ物にならないのは明確。よって推測は算出されたよりもさらに低く見積もるべきであろう。

ゲロ喰う虫も好きずき

では、何故そのゲロを好む人が“ヒット”するほどまでいるのか?
まず、過去の作品の惰性で見る人もいただろう。「今度こそは!」と願うような気持ちで劇場へ向かった人。そういった方には同情を禁じ得ない。本当にご愁傷さまでした。
さらに、ゲロしか喰った事の無い人もいるだろう。上記したように評価は必ず相対的な物になるワケだが、もし、その対象になるのが「踊る3」よりも下、もしくは同等のゲロであった場合。その中で優劣を決めざるを得ないのであれば『優』の評価を得るのも不思議では無い。
また、ゲロを喰ってるのにパッケージにダマされる人の存在もあるだろう。つまり「踊る3」は有名=面白い。もしくは見る前から有名でヒットの約束された作品なのでありがたく御視聴させていただいた手前面白いと感じざるをえないという人。
誰かに聞いた話だが、映画の学校に入学するような学生の中にあまり映画を見ないという、本末転倒な人がいたらしい。その理由を聞くと「知らない映画は見たくない。」と言ったそうなのだ。おそらくテレビCMでの「全米第1位!」といった煽りなどの保証が無い映画は見たくない。という事だ。この話を聞いた瞬間にイラっとしたがすぐにその心中は察する事が出来た。

やっぱり保証の話

小汚い個人営業のラーメン屋と日高屋が並んでいたら相当悩む。特別に旨いラーメンじゃないのは確定していても、それほどマズく無いという保証のあるチェーン店と、賭けの要素の強い個人営業店。保守的なマジョリティは日高屋に入るだろう。
この数年、テレビドラマの劇場映画が次々と公開されヒットしているのは、テレビドラマがCM=保証の役割をしているからだ。ドラマの人気が上がれば保証の確実性も強くなる。そのシステムに乗ろうとして大失敗したのが「スシ王子」だが、プロデューサーや客たちはそんな事もすっかり忘れて同じ監督の「20世紀少年」シリーズや「BECK」にかけつけたのだろう。御愁傷様である。「SPEC」人気ですね。ボクは見たことないですが。劇場版楽しみにしている人もいることでしょう。ボクは見ませんが。絶対にツマんないから。
コミック原作の映画化もしかり。人気コミックの映画化ならば連載誌に映画公開の広告をうてばピンポイントに効果的なアピールが出来るし、好意的に期待する人の数も膨大になるだろう。
80年代半ばごろまで007シリーズの新作が公開になると必ず各局の映画番組では過去のシリーズ作を放映していたし、新作の特集番組も作られ放映されていた。雑誌もしかり。「E.T」公開前に少年マガジンでスクープ的にE.Tの姿を表紙にした事は今でも憶えている。
それらメディアを縦横無尽にある1本の映画の広告が駆け巡る戦略といえば角川グループの金田一耕助ものは忘れられない。また、「セーラー服と機関銃」を原田知世主演でドラマ化したり、「時をかける少女」を南野陽子でドラマにしたりと“保証の転用”をしていく角川の話題作りは上手かった。
つまり、メディアを使っての絨毯爆撃的な広告戦略は古典的な常套手段だ。その当時と今、「踊る」シリーズで何が変わったのか?といえば、映画の中身だ。

踊る大捜査線」が変えたもの

角川映画を例に取るが、監督は市川崑であったり大林宣彦相米慎二であったりとキチンとした映画を作れる人がキチンとした映画を作っていた。「踊る」の監督本広克行の「踊る」以外の監督作って「UDON」とか「少林少女」なワケでしょう。「踊る」のバイアスが無ければとたんにコレですよ。それでも映画を作り続けていられるのはどういう事か?これは堤幸彦にも言える事だ。堤の場合は記録的な大惨敗を喫しているにも関わらず「20世紀少年」や「BECK」というそれなりに大きなプロジェクトに監督として納まり続けている。何故か?
ようするに中身かんけーねーんである。
「踊る」シリーズがことさら取りあげられるのは最初の1作目がそれなりに面白かったから異質な存在になってしまっているだけで、2作目以降は「ルーキーズ」や「海猿」と一緒。ゲロをキレイにパッケージして金とって売るという詐欺を働いているワケだ。
『それをやってもイイんですよ!パッケージさえ綺麗なら中身関係なく売れますよ!』という前例を作ったのが「踊る」の映画シリーズなのである。客をゲロ喰いのアホだと見積もった最低最悪のクソ連中である。
だから「ねえねえ、これ詐欺なんだけどネタになるから被害こうむってみなよ!」と言う輩がいたら「バ〜カ!」ってひっぱたくぐらいの事はするでしょ?